お客様の声|コニカミノルタ株式会社様
コニカミノルタ様、デザインの購買行動への影響がわかる「EX感性ソリューション」をAWSに構築
アジャイルのアプローチによるフレキシブルな開発スタイルでユーザーの期待に応える
お客様概要
コニカミノルタ様は、創業以来人々の「みたい」という想いに答えるために、見えないものを可視化する技術を追求してきました。2022年4月には、これまでの知見に感性脳工学を取り入れた「EX感性ソリューション」というオンラインサービスを発表しました。このサービスは、脳工学の画像解析を利用して人の感性を定量化し、購買行動に影響するデザイン要素を分析・評価します。パッケージやチラシなどに含まれるデザイン要素色を分析することで、消費者の購買行動を予測し、より効果的なデザインの提案ができるようになります。ベンジャミンは概念実証から本番稼働・運用まで、本サービスの実現を支援しました。
見た目のデザインの説明可能性を提供する画期的サービス
コニカミノルタは、1873年の創業から今日にかけて、画像や色を中心とした技術の革新者として歩んできました。その歴史の中で、複合機・プリンター、印刷用機器、ヘルスケア用機器、産業用計測機器の販売を展開し、さらには関連する消耗品やソリューション・サービスの提供にも力を注いできました。
この経緯を背景に、コニカミノルタは常に新しい技術の探求を続けています。近年、それが具現化したのが感性脳工学の領域での研究です。広島大学を中核とする文科省/JSTプログラム「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」に参加することで、人の脳の反応を科学的に捉え、感性の可視化を試みました。この先進的なアプローチから、「EXplainable感性ソリューション(EX感性)」という画期的なオンラインサービスのアイディアが生まれました。
このサービスは、感性脳工学に基づいたアルゴリズムを利用し、マーケティング活動、特にパッケージやポスターなどのデザインにおける消費者の感性への影響を定量的に解析します。消費者の心に響く購買行動を予測する新しい指標を示し、見た目のデザインに「説明可能性」をもたらすことで、新たな価値創出に活かすことができる画期的なサービスです。
最初の概念実証(PoC)では、イノベーション拠点の機構長・ひろしま感性イノベーション推進協議会長に協力いただき、コニカミノルタのプロフェッショナルプリント事業本部 浦谷勝一様が様々なメーカーに参加の打診をお願いしました。やがて、ある味噌メーカーが新しいパッケージデザインに使用することを検討し、そこでデザインコンサルティングとしてのPoCが始まりました。「このプロジェクトでは、アイトラッキングのメガネを使用し、時間をかけて良いデザインを完成させ、コニカミノルタでも感性を可視化する面白さや理解のしやすさを体験しました」(浦谷様)。
やがて、この取り組みを知った他の顧客からもコンサルティングの依頼が来ました。本プロジェクトに参加したコニカミノルタ プロフェッショナルプリント事業本部の井上 暁 様は、「コンサルティングの形式では、このサービスを拡大できない。オンライン上で感性を判断できるソリューションを開発する必要がある」と提案しました。浦谷様もこの意見に賛成し、感性判断のオンラインサービス開発に取り組み始めました。
当初、プロトタイプのアプリケーション開発は海外の企業に依頼していましたが、彼らはWebベースのシステム開発に慣れていませんでした。また、以前から弊社でお付き合いのあったシステム開発会社はウォーターフォール型の開発を採用していたため、世にない形のオンラインサービス開発にあたり完成期間やコストに不安がありました。浦谷様・井上様は、クラウドネイティブなアーキテクチャーで、不確実性の高いサービスの開発において試行錯誤ができるアプローチを求めていました。その結果、既存の開発メンバーで要件を満たすのは難しいと判断します。「弊社は医療や印刷機器への組み込みアプリケーション開発は得意なのですが、クラウド向けはまだまだ立ち上がったばかりで、内部に知見がありませんでした」(井上様)。そこでα版の開発から柔軟に製品開発に対応できるベンダーを探求することとなりました。
手本のない新サービスのアイデアを次々と実現
2021年3月ごろ、新たな開発パートナーを探していた井上様は、案件マッチングサイトで募集を行いました。応募してきた数社の中から、ベンジャミンを選びました。選定の理由は、ベンジャミンがAWSにおける豊富な実績を持っていること、ECサイトなどB to Bのオンラインビジネスを熟知していること、要件が未確定なプロジェクトに対して柔軟に対応できるアジャイルなアプローチに長けていること、そして求めていたフットワークの軽快さです。
井上様は、まだ構想が具体化していない初期段階でも、アイディアを提案した際に迅速に展開できたことを強調し「システムの構成やユーザーの背景を含む提案書を早急に見せてもらえたことで、スムーズに進行できました」と述べました。
一方、浦谷様は、提供された提案が期待を超えるものだったことを評価し「私たちがまだ確定していない、形成途中のアイデアを話している際に、『このフレームはどうですか』や『こんなアイディアを加えてみてはどうですか』といったように、私たちの予想を超える提案をしてくれました。提案は100%ではなく、101%だったんです。これにより、開発が良い方向に進むと感じました」と振り返りました。
その結果、2021年6月から「EX感性ソリューション」のプロジェクトにおいて、新しいプロトタイプの開発がスタートしました。ベンジャミンの開発チームは、コニカミノルタのアイデアを汲み取り、その実現を技術面やシステム面からサポートしました。特に手本となるサービスがないため、アイデアをひとつひとつ形にして行ったのです。井上様は「最初に想定ユーザーのフローなどについて整理していただいたのは助かりました。上流部分からご提案いただけるのは一番ありがたいですね」と語りました。
「EX感性ソリューション」は、当初からオンラインで提供するSaaSモデルの事業を想定していました。このため、需要に応じてスケールしていけるよう、サーバレスのアーキテクチャを採用しました。感性脳工学に基づくアルゴリズムは別のパートナーによって提供され、各種分析に関わるモジュールと分析画面を繋ぐAPIを開発しました。
2022年7月になると、プロトタイプの完成度が高まり、実用化に向けた再構築が行われました。エンドユーザーは、販促物やパッケージのデザインを改善したい企業・団体です。そこで、画像分析の処理をする部分と、エンドユーザーが触れるフロント部分は分離し、複数のユーザーが同時に利用できるように改善しました。さらに、分析の精度を向上する外部サービス連携も行いました。
分析結果をわかりやすく伝えて活用できるよう、ユーザー体験にもこだわりました。分析対象が注目されるポイント、視点が動く順番、目立つ文字、使われている色のイメージ、ポジショニングなど、さまざまなチャートやランキング表、デザイン要素で効果的に伝わるよう工夫しました。分析結果を会議や提案資料などにコピーしたり、PDFとして保存したりできるような、ユーザーの利用シーンを考慮した提案を行い、機能として実装していきました。
サービスのバージョン1への移行において、浦谷様は非常に効果的なプロセスが実現したとし「正式にローンチ前に、バージョン0.9としてお客様に使用していただきました。この時にお客様からさまざまな意見が寄せられました。これによってお客様の直接のフィードバックをもとにベンジャミンと協力し、正式版のリリースをスムーズに行うことができました。お客様、コニカミノルタ、ベンジャミンの三者が協力してサービス改善に取り組んだことで、このプロセスは成功を収めたと思います」と話しました。
ナショナルブランドが注目。デザインの定量評価が良い効果を生む
こうして「EX感性ソリューション」は2023年4月 に正式リリースを迎えました。コニカミノルタ様では当初、オリジナル商品を提供するEC事業者や物流事業者がこのサービスの主なユーザーだと考えていましたが、ナショナルブランドと呼ばれる、大企業の支持を集めました。デザインの定量評価というこれまでになかったアプローチが注目されたのです。実際、大手飲料メーカーが新発売した飲料のパッケージデザインの評価に「EX感性ソリューション」を活用したのです。ほかにも、プレゼンテーションスライドやWebサイトの改善やレストランのWebサイトでのメニュー改善、電車内広告の認知拡大、ダイレクトメールの効果向上など、数々の成功事例が生まれています。さらに、海外の企業からも注目されているといいます。文化の違いはありますが、デザイン評価は万国共通の部分もあるようです。
浦谷様は「お客様からは、売上やクリック率が徐々に向上しているとの肯定的な声が届いています。また、コンサルティング会社からは、これまで定性的に評価されていたデザインを定量的な基準で評価することに変えた結果、入札に成功したとの報告も受け取りました。これらの好結果を聞いて、私たちは素直に喜びました」と語りました。
AWSのマネージドサービスを活用したインフラ面では、グローバル企業であるコニカミノルタ様のセキュリティ基準をクリアし、安定性・可用性・拡張性とともに高いコストパフォーマンスも実現しました。ベンジャミンのメンバーは、実装にあたり、さまざまな技術の評価を行い、最善の結果を求めるアプローチで、システムの完成度を高めていきました。ビジネスのアウトカムを最大化できるよう、技術の選定にこだわったのです。
井上様は、アジャイルなスタイルで進んだプロジェクトを振り返り、「毎週の打ち合わせで迅速なフィードバックを受け取り、その場で課題を設定し、次週に向けて業務を進めることができるのは本当にありがたいです」と話しました。浦谷様も「さまざまなシーンで小さなヒントを与えてくれます。豊富な知識を持っているので、私たちが困りそうなことを先読みしてくれます。情報提供のタイミングが絶妙です。全てを一度に出すのではなく、現状を踏まえた次の課題を予測し、適切な情報を提供してくれる。この情報提供の仕方が非常に素晴らしい」と話しました。
「EX感性ソリューション」は今後も成長していくといいます。例えば、複数のデザイン案の詳細なスコアリングや、デザインの評価だけでなく、生成AIを使った改善デザインや改善コピーの提案など、さらに価値提供価値を高めていく構想を持っています。ベンジャミンでは今後もさまざまな面でサポートしてまいります。
お客様の声
「ベンジャミンの担当者が外部AIと連携した提案をしてくれて、分析の精度を高めることができました。一緒にプロダクトを育ててくれる、大事なパートナーです」
「ベンジャミンの担当者は、情報提供のタイミングが絶妙です。全てを一度に出すのではなく、現状を踏まえた次の課題を予測し、適切な情報を提供してくれる。この情報提供の仕方が非常に素晴らしい」
コニカミノルタ株式会社
プロフェッショナルプリント事業本部 PPHマーケティング統括部 PPマーケティング部 売れるを科学するGr グループリーダー 広島大学客員教授
浦谷 勝一 様
「私たちのアイデアやユーザーの声に対し、ベンジャミンのメンバーはすぐに対処法を考え実装してくれました」
「毎週の打ち合わせで迅速なフィードバックを受け取り、その場で課題を設定し、次週に向けて業務を進めることができるのは本当にありがたいです」
コニカミノルタ株式会社
プロフェッショナルプリント事業本部 PPHマーケティング統括部 PPマーケティング部 売れるを科学するGr. マネージャー 広島大学客員准教授
井上 暁 様
企業概要
会社名:コニカミノルタ株式会社
所在地:〒100-7015 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー
事業内容:電複合機・プリンター、ヘルスケア用機器、産業用計測機器などの販売、並びにそれらの関連消耗品・サービスの提供
従業員数:39,775名(2023年3月現在。連結)
コニカミノルタ株式会社様は、複合機、プリンター、ヘルスケア用機器、産業用計測機器の販売を行っており、関連する消耗品やサービスも提供しています。特に、複合機やその消耗品の開発・製造・販売を手掛けるとともに、ITソリューションやデジタル印刷システム、印刷に関するサービスやソリューションも展開しています。ヘルスケア事業では、デジタルX線や超音波診断システムを含む画像診断システムの提供のほか、医療のデジタル化に関するソリューションも取り組んでいます。さらに、センシングや材料・コンポーネント分野での機能性フィルム、インクジェットヘッド、レンズの開発・製造・販売や、画像IoTソリューション分野での製品やサービスも提供しています。
主な効果
- 柔軟な対応・発想と伴走による新サービス立ち上げ支援
- 分析結果を効果的に伝えるユーザー体験の提供
- 分析精度にこだわりながら、高いコストパフォーマンスを実現
利用した主なAWSサービス
- AWS Fargate
- Amazon Aurora MySQL
- Amazon EFS
- AWS Amplify、
- Amazon Cognito
- AWS Lambda