Case study
お客様の声|
岩崎電気株式会社様
岩崎電気様、広島県呉市に提供する冠水状況把握システムをサーバレスで開発
防災・安全をキーワードにした事業を推進
お客様概要
岩崎電気様は、「照明事業」と「光・環境事業」を手掛けており、「安心・安全」をテーマにセンサー技術を用いた新事業を展開中です。過去の取引先である広島県呉市へ冠水状況を把握するシステムの提案を行いましたが、AWSなどのクラウド技術に関する知識が不足していたため、ベンジャミンにサポートを求めました。ベンジャミンは、ランニングコストを抑えたサーバレスのシステムを構築し、見やすいマップ表示などの管理画面を提供。新規事業のスタートをサポートしました。
照明メーカーが新たに目指す、防災関連プロダクト
岩崎電気様は、5,500種類の光源を生産する技術リーダーとして知られ、「IWASAKIブランド」での照明器具や光・環境製品を世界に提供しています。都市環境の照明部門では、都市景観やスポーツ施設、商業施設の照明を手がけ、環境保全の光・環境部門では紫外線殺菌や水処理、EB技術を開発。また、情報化社会の光・環境部門では、印刷・製版システムや情報表示技術などを提供しています。岩崎電気様の製品は、日常生活から研究施設まで、さまざまな場所で使われ、その技術の幅広さと深さが強みとなっています。
同社では、防災や安全安心をテーマにした新商品の開発も行なっています。照明関連の取引で繋がりのある広島県呉市から、ある相談を受けます。海から近い立地の呉市では道路が冠水しやすく、台風や豪雨で市民生活に影響が出るというのです。そこで岩崎電気様では、道路などにつけたセンサーによって情報を取得し、オンライン上の地図で冠水状況を把握し、その後の対策を判断できるシステムを考案し、提案することにしました。
岩崎電気様では、センサーから情報を配信する仕組みはソニーネットワークコミュニケーションズ社の通信サービス「ELTRES IoTネットワークサービス」を使用し、データの処理はクラウドサービスのAWS(Amazon Web Services)で行うシステムをイメージしていました。しかし、社内やこれまで付き合いのあった外部の協力会社も含め、AWSのアプリケーションでシステム構築を行った経験がありませんでした。そこで、AWS環境構築の経験が豊富なベンジャミンに相談しました。
2022年11月ごろに相談を受けたベンジャミンは、インフラの初期費用が不要で、動作したぶんだけ費用を支払うサーバレスアーキテクチャーのシステムを提案しました。AWSには、Amazon EC2などの仮想サーバーサービスも用意されていますが、サーバーを持つシステムの場合は、サーバーを稼働させておくだけで、何も処理をしないときでも固定の費用がかかってしまいます。岩崎電気様としても、顧客に固定費の負担を求めなくて済むサービスは、営業提案の面でも有利に働くと判断し、ベンジャミンの提案を受け入れ、2023年12月に正式に開発を依頼しました。選定にあたっては、ベンジャミンが持つAWSの知見に加え、相談してから応答までの提案スピードや提案の内容、開発から保守までトータルに支援する能力も評価しました。
見た目や使い勝手を工夫し、セキュリティにも気を配る
今回開発した「NodeViewerシステム(冠水センサ情報表示システム)」は、AWSでフルスタックアプリケーションを容易構築できるAWS Amplifyを使用しました。主要なコンポーネントとして、サーバレスコンピューティングサービスのAWS LambdaとマネージドデータベースのDynamoDBを利用。開発言語はJavaScriptで、Reactフレームワークを採用しています。
今回監視対象となった6箇所の道路に設置したセンサーから取得した情報は、ELTRES IoTネットワークサービスのサーバーに蓄積されます。これをAWS側に集めて処理するためにAPIを利用し、1分に1回程度の間隔で情報を取得することにしました。ユーザーが見る管理画面での地図表示にはOpenStreetMapを、危険な冠水など、監視対象の道路に異常が発生した際にアラートを送信する仕組みはSendGridを使いました。なお、サービス提供者である岩崎電気様と、その顧客である呉市などのユーザーの管理機能も盛り込まれています。
開発とテストは2023年1月から3月にかけて行い、3月20日にはサービスインを果たします。ベンジャミンの開発担当者は、マップ上で監視対象の状況をわかりやすく表現し、ユーザーの操作体験などを快適にするため、デザイナーと協議しながら開発をすすめていきました。社内でディスカッションしたあとにプロトタイプを作成し、それを岩崎電気様の担当者に使ってもらってそのフィードバックを得て、改善するプロセスを繰り返していきました。マップ上の監視対象は、冠水のレベルがすぐにわかるようなデザインとなりました。
クラウドサービスは、稼働に応じてコストがかかる料金体系になっていますが、設定や条件によっては求めていた以上に処理が進み、思いがけないコストがかかる場合があります。ベンジャミンではシステムの不具合も常に監視して異常を検知する備えもしています。セキュリティやデータのバックアップなども、AWSのベストプラクティスと、これまでの経験に基づいた設定を施しています。
コストを抑え、多くの人々の安心・安全を目指す
できあがったNodeViewerシステムについて、開発を依頼した商品開発部 開発課の大脇 理 氏は「イメージ通りのシステムができました。サーバレス技術を採用し、ランニングコストも抑えています。ベンジャミンに頼んでよかったと思っています」と語りました。従来のサーバーを持つアーキテクチャーなら、最低でも月額数万円の費用は必要で、規模が大きくなれば増設するなどの手間もかかります。今回、サーバレスのアーキテクチャーを採用しているため、コストは想定の5分の1から10分の1程度と大幅に抑えながら、規模の拡大にも耐えられるものとなりました。
岩崎電気様では今後、このシステムを発展させ、冠水レベルの表示だけでなく、地図上での周辺道路への影響や迂回路の表示など、より高度な情報を表現したいという構想を持っています。現在のNodeViewerシステムは市の関係者のみに解放されているものですが、Webでの一般公開も視野にいれた検討を進めています。将来的にはハザードマップやカメラ画像との連携も行い、市民の安心・安全に貢献することを目指しています。 岩崎電気様としては、呉市との取り組みをもとに、豪雨や水害などで悩む多くの自治体や企業・団体に対してサービスを提供し、広く社会や環境への貢献をしていきたいと考えています。ベンジャミンでも引き続き、この活動を支援してまいります。
お客様の声
岩崎電気株式会社 商品開発部 開発課 大脇 理 様
「イメージ通りのシステムができました。サーバレス技術を採用し、ランニングコストも抑えています。ベンジャミンに頼んでよかったと思っています」
企業概要
会社名:岩崎電気株式会社
所在地:〒103-0004 東京都中央区東日本橋1-1-7 京王東日本橋ビル
事業内容:各種光源、照明器具、光環境機器(紫外線・赤外線・電子線応用)などの製造及び販売
従業員数:1,578名(2023年3月31日現在。連結)
岩崎電気様は、経営ビジョンに「光技術と新たな技術の結合で、社会・産業インフラを支える先進企業を目指す」を掲げ、1944年の創業以降、光テクノロジーを中心に社会に革新的な価値を提供してきました。主要事業として「照明事業」と「光・環境事業」を展開。照明事業では市場ニーズに応える製品を、光・環境事業では紫外線や赤外線などの技術でソリューションを提供しています。これらの事業を推進するためのサプライチェーン強化やIT・DX推進、新技術開発に力を注ぎ、SDGsを含むサステナビリティ活動も展開しています。
主な効果
- サーバレスアーキテクチャーによるコスト抑制
- 見た目やユーザー体験の優れたインターフェース
- 規模の拡張・縮退に対応できるスケーラブルな設計
利用した主なAWSサービス
- AWS Amplify
- AWS Lambda
- Amazon DynamoDB