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段ボール製造業の標準化に課題があった案件管理・原価算出システムを刷新
──AWS上のモダンアーキテクチャで業務プロセスを再定義し、業務効率向上と歩留まり改善を実現

サクラパックス株式会社様は、創業78年を迎える北陸の段ボールメーカーです。従来、案件管理や原価算出が属人化し、情報が部門ごとに分かれて管理される課題を抱えていました。2025年1月、同社はAWSパートナーのベンジャミンと協力し、業務プロセスの再定義から着手。モック駆動の要件定義を通じて現場の暗黙知をシステム化し、AWS環境に新たな案件管理・推奨工程原価算出システムを構築しました。2025年10月の本番稼働後、情報検索時間の大幅削減や営業効率の向上など、具体的な成果が現れ始めています。

ビジネスの課題

  • 営業・設計・印刷・製造の各部門で役割ごとに情報管理が行われており、案件全体の進捗や履歴を俯瞰的に把握しにくい
  • 工程判定や原価算出が熟練者の経験に依存し、仕組み化に向けた検討の余地があった
  • 要件定義は完了していたものの、運用面で課題が残っており、現場への定着を見据えた見直しが必要だった
  • ローカル環境に散在するデータ管理により、情報検索に多大な時間を要していた

効果

  • 「1製品:複数案」構造による一元管理で、情報検索時間を約5分の1に削減
  • 推奨工程原価算出システムにより、設計段階で原価・工程を把握可能となり、営業の提案スピードが向上
  • 1人あたり1日15〜30分の事務作業削減を実現。対象は営業20名、設計12名、業務推進3名
  • 歩留まりの全体平均1〜2%改善を見込み、全体業務効率で10%の削減を期待

担当者の経験に依存し、情報が分散していた業務の課題

サクラパックス様は、富山県を拠点に段ボール製品および包装資材の企画・設計・製造・販売を手がけるトータルパッケージメーカーです。1947年の創業以来、4000社を超える顧客の期待に応えてきました。そんな同社の強みは、専門設計士を抱える設計部門と、企画から製造、物流までを一貫して提供できる体制にあります。

しかし、こうした強みの裏側には課題がありました。パッケージ製造業界では、営業担当者が顧客窓口から設計依頼、品質管理、量産手配まで一人で担当する「個人商店主」的な働き方が一般的です。そのため、案件に関する情報や判断の背景が担当者ごとに蓄積されやすく、組織全体で共有しにくい側面もありました。常務執行役員R&D本部長の難波仁志氏は「担当者ごとに知見が蓄積される業務であるため、育成や引き継ぎには一定の時間が必要になります」と、人材育成や引き継ぎ面での課題を語ります。

業務プロセスにも問題がありました。従来は依頼ごとに設計が応答する細切れの進め方で、一つの製品に関する複数の設計案や変更履歴が営業・設計・印刷・製造の各部門で個別に管理されている状況でした。難波氏は「情報が分散しており、必要な情報をすぐに把握することが難しい状態でした」と振り返ります。

こうした課題に対し、社内でソフトウェア開発人材が「設計依頼システム(バージョン1)」を構築しましたが、機能追加を重ねるうちに複雑化し、開発担当者の定年退職を前に保守困難な状態となっていました。

さらに深刻だったのは、工程判定や原価算出が熟練者の経験に依存していた点です。どの設備で製造可能か、歩留まりはどの程度か、セット時間はどれくらい必要か──こうした判断は現場の「勘どころ」に頼っていました。情報システム部部長でプロジェクトマネージャーを務める吉谷和幸氏は、「ローカルのPCのどこかのフォルダに情報が入っているので、作った人もよく覚えていない状況でした」と当時の混乱を説明します。

こうした状況を打開するため、同社では2023年頃からシステム刷新の構想を開始しました。一度はデータベースを整備し汎用化を図った「バージョン2」のシステムを構築したものの、業務プロセス自体は変わらず根本解決には至りませんでした。難波氏は「業務のやり方そのものを変える必要があった」と判断し、業務プロセスの再定義から着手する「バージョン3」の開発を決意したのです。

現場訪問から始まった業務再定義とシステム構築の伴走

2024年10月頃から、新システムの開発パートナー選定が始まりました。約10社から3社に絞り込み、さらにそこからベンジャミンを選定します。その理由について難波氏は「ベンジャミンの担当者が、当社まで足を運んでヒアリングしてくださったことが決め手でした。他の候補はオンラインで技術的な話をされましたが、ベンジャミンの担当者は我々の課題に焦点をあてた聞き取りをされましたので、伴走してくれる姿勢を感じました」と述べました。

2025年1月にプロジェクトが開始されると、バージョン3の要件定義の見直しが行われました。社内で作成済みの要件定義が現場と乖離していたため、複数部門を巻き込んで現状(AS-IS)と理想(TO-BE)の業務フローを書き直すことから着手しました。難波氏は「営業、設計、生産管理が何をするか、全てをフローチャートにして本来あるべき姿を描き直しました」と説明します。

要件定義において、モックアップによる検討が効果的でした。毎週の定例会で、ベンジャミンは実際に動く画面を提示し、それを見ながら各部門と議論を重ねました。吉谷氏は「画面を見て画面遷移も確認できるので、システム担当でなくてもわかりやすく、イメージしやすかったです」と評価します。生産技術グループチーフの南部達慶氏も「私は言葉で伝えるのが苦手なタイプですが、モックアップを作ってもらうことで、わかりやすく理解できました」と重ねました。

こうしたプロセスの中で、難波氏はベンジャミンの業務理解の深さを実感します。「当社の社員以上に業務フローを深く理解してくださり、部門間で意見がぶつかったときも、第三者の視点から的確なアドバイスをいただけました。部門間で意見が分かれる場面においても、共通理解をつくる上で大きな助けとなりました」と語ります。

新システムの核となったのは、「1製品:複数案」という構造です。従来は一つの依頼ごとに案件を管理していましたが、これを製品単位に切り替え、一つの製品に対する複数の設計案(A案・B案・C案)を紐付けて一元管理できるようにしました。関連する全ての依頼や変更履歴が製品ごとに集約され、進捗状況が一目で把握できる仕組みになりました。

もう一つの重要な機能が、推奨工程原価算出システムです。これまで熟練者の経験に依存していた工程判定や原価算出を、設計者自身が行えるようにしました。寸法・材質・ロットなどを入力すれば、最適工程と原価が自動算出される仕組みです。南部氏は「設備ごとの制約や必要時間を『条件値』として数値化し、後からメンテナンスしやすいよう、いつでも変更可能になります」と説明します。

システム基盤には、バージョン2から採用していたAWS環境を引き続き活用しました。吉谷氏は「自社サーバーで運用するよりも、AWSのセキュリティ環境の方が優位だと判断していました」と語ります。Amazon S3、CloudFront、Amplify Hostingによるフロントエンド、AWS FargateとAurora Serverless V2によるバックエンド、さらにGitHubと連携したCI/CDパイプライン(CodePipeline、CodeBuild、CodeDeploy)など、マネージド環境を活用した開発・運用体制を構築しました。

情報検索、事務作業、営業活動──業務全体の効率化を実現

2025年10月の本番稼働以降、新システムはさまざまな成果を出しています。まず、情報検索時間の劇的な短縮があります。難波氏は「製品の情報を探す時間が従来の約5分の1程度になりました。案件ごとに全情報を集約したことで、どこに何があるか即座に把握できるようになりました」と語ります。従来はローカルPCの複数フォルダを横断的に確認する必要がありましたが、製品単位の一元管理により解消されたのです。

R&D本部業務推進グループの山田沙紀氏は、日常業務レベルでの変化を実感しています。「以前は依頼ごとに起票し、PDFのやり取りや、システムをまたいだファイル共有が必要でした。現在は同じシステムから依頼を一元化しているので、1人1日15〜30分程度の事務処理は削減されていると思います」。この削減効果は営業20名、設計12名、業務推進3名の合計35名程度のメンバーに及びます。

営業活動への影響も大きいと難波氏は期待を寄せます。「営業が図面を書いたり資料を探したりする社内業務から解放されることで、顧客対応に集中できる時間を確保できるようになると捉えています」。さらに、設計段階で原価と工程を把握できるようになったことで、顧客との商談も変化しています。「以前は、良い設計を持って行っても『こんな金額では買えない』と言われておしまいでした。今後は顧客の価格要望に応じた提案ができるようになり、失注していた案件も取れるようになるのではないかと期待しています」。営業担当の声について吉谷氏は「営業から『便利です』という声を聞いており、効果を実感しています」と話しました。

生産面でも改善が見込まれています。難波氏は「歩留まりの全体平均で1〜2%改善できると考えています。商品数が多い中で1%上がるのは非常に大きな進歩です」と数値目標を示します。

仕事のしやすさにも変化が訪れています。山田氏は「以前は設計が上流工程で手を離していたので、製品がどのように量産され、どんなトラブルが起こったかを知りませんでした。今後は設計が主担当として量産化まで責任を持つことで、設計起因のトラブルを自分ごととして改善できます」と語ります。南部氏も「設備導入の判断に活用できるデータが蓄積されるようになりました」と、データ活用の可能性を語りました。

今回のプロジェクト自体が組織に与えた影響もあります。吉谷氏は、「さまざまなメンバーが関わってスクラッチでシステムを組むプロジェクトを社内で初めて経験しました。ベンジャミンのサポートもあり、社員がシステムづくりの経験ができたことも大きな成果です」と話しました。

ベンジャミンへの評価も高く、難波氏は「ベンジャミンでなければ、ここまでうまくいかなかったと思います」と断言します。山田氏は「対応が迅速で安心感がありました。システム会社ってこんなにすごいんだと感動しました」と語ります。吉谷氏は「担当者との相性も良く、こちらの要求にも素早く対応いただきました」と評価しました。

営業DXへの挑戦と、使い続けて成長する仕組みへ

今回のプロジェクトで設計・案件管理の上流工程を整流化できたサクラパックス様は、既に次のステップを見据えています。難波氏は「営業DXの領域に切り込んでいきます」と語ります。推奨工程原価算出システムの本格稼働により、従来の経験則や過去履歴に基づく見積もりから脱却し、原価ロジックに基づいた値上げ交渉を可能にすることを目指しています。

吉谷氏は、さらに大きな構想を描いています。「営業支援ツールから引き合いが始まり、案件管理、見積システムを経て、基幹システムの販売管理・生産管理までをシームレスにつなげたい。実績データと案件データを統合管理するトータルデータ基盤を構築できればベストです」

難波氏は「ベンジャミンには引き続き伴走していただきたい」と期待を寄せ、吉谷氏も「今後の追加開発もお願いしたい」と語ります。要件定義からの伴走型支援により業務変革を実現した今回のプロジェクトは、サクラパックス様にとって「使い続けて成長する仕組み」への第一歩となりました。次なるフェーズでも、ベンジャミンは継続的に支援してまいります。

お客様の声

難波 仁志 氏(常務執行役員 R&D本部長/プロジェクトオーナー)

【ベンダー選定と業務理解】  
ベンジャミンの担当者が当社まで足を運び、課題に焦点をあてたヒアリングをされたことが決め手でした。当社の社員以上に業務フローを深く理解してくださり、第三者の視点から的確なアドバイスをいただけました

【業務効率化の成果】  
製品の情報を探す時間が約5分の1になりました。営業が社内業務から解放され、顧客対応に集中できる時間を確保できるようになると考えています。失注していた案件も取れるようになると期待しています。

吉谷 和幸 氏(情報システム部 部長/プロジェクトマネージャー)
毎週の定例会で動く画面を見ながら進められたので、システム担当でなくてもわかりやすかったです。スクラッチでシステムを組む経験を社内で初めてでき、ベンジャミンのサポートに感謝しています

南部 達慶 氏(生産技術グループ チーフ)
言葉で伝えるのが苦手ですが、モックアップを作って見せてくださり、わかりやすく理解できました

山田 沙紀 氏(R&D本部 業務推進グループ)
1人1日15〜30分程度の事務処理が削減されました。設計が量産化まで責任を持つことで、設計起因のトラブルを自分ごととして改善できます。ベンジャミンさんの迅速な対応に感動しました

利用した主なAWSサービス

  • Amazon S3
  • Amazon CloudFront
  • AWS WAF
  • AWS Amplify Hosting
  • AWS Fargate
  • Amazon Aurora Serverless V2
  • AWS CodePipeline
  • AWS CodeBuild
  • AWS CodeDeploy

構成図

お客様概要 / サクラパックス株式会社様

所在地
〒930-0106 富山県富山市高木3000

ホームページ
https://www.sakura-paxx.co.jp/

事業内容
段ボール製品および包装資材の企画・設計・製造・販売

従業員数: 349名(単体)、413名(グループ全体)

サクラパックス株式会社様は、1947年創業、富山県に本社を置く段ボール・包装資材のトータルパッケージメーカーです。北陸エリア(富山・石川・新潟)に工場・営業所を展開し、地域に根ざした事業を展開しています。企画・設計から製造・販売までの一貫体制を強みとし、専門設計士を擁する設計部門による付加価値の高い包装提案が特徴です。近年は物流サービスなど新規事業にも積極的に取り組み、「すべてのものを正しく包み、確実に運ぶためのBest Wayを提供し続ける。」というミッションのもと、顧客の期待を超える価値創造を目指しています。